「パパには
頑張って貰わなくっちゃ」
「おまえが、頑張れッ」
セイがまた
私のオデコを小突いた。
パパもママも
お金のコトや
仕事のコト
私達に
愚痴ったりしたコトもない。
いつもニコニコ
笑ってて。
だから、私
パパが外で
どれだけのプレッシャーと
戦っているか、なんて
考えたコトも
なかったけれど。
世の中なんて
いいヒトばかりで
構成されてるワケじゃなく。
騙すヒトもいれば
要領のいいだけのヒトもいて。
「……」
立派なガラス張りの
エレベーターから見下ろす
働く日本のサラリーマン。
みんな
同じように見えるけど。
「もしかしたら
このサラリーマンの中にも
刑事さんが
混じってたりして」
私のセリフに
「そこまで考えてたら
アタマおかしくなるぞ」
セイが苦笑している。
だけど。
警察の監視の目が光ってた
あのマンションから
ジュナさんは
どうやってあの子を
連れ出したというんだろう。