「…ママから
電話を貰ったよ」
パパがそう言いながら
奥のドアから出てきたのは
15分程待った後で。
「だと思った」
困った顔をしているパパに
セイが
穏やかな笑顔で答えてる。
「ちょっと
話したいんだけど」
セイがパパを
外に誘おうとした。
「悪いけど。
取引先のヒトと
合わなくちゃいけなくて
10分後の電車に
乗らなくちゃいけないんだ」
…それは
私達を誤魔化す為の
適当な言い訳なんかじゃ
ないのだろう。
パパの手には
コートとカバンがあって。
「俺達の用事は
すぐ済むから」
セイが
エレベーターのボタンを
パパの為に押す。
「…今夜はウチに
9時には戻れるから
帰ったらゆっくり話そう」
昇ってきたエレベーターに
乗り込みながら
パパは
私達に言い含めるように
話し掛けてきた。
「母さんから
何て聞いたのかは
知らないけれど」
セイが
エレベーターの中
静かに口を開く。
「ジュナさんみたいな
女性がひとりで
あの子を
守り続けるなんてコト
父さんは
本当に出来るとか
思ってるの?」
「……」
「警察の許可を
取ってるなんて
ウソまでついてるオンナを
信用できるワケ?」
セイは
時間が勿体ないと
言わんばかりに
駆け引きなしで
どんどん
核心を突いていく。
なのに
「…おまえ達が
心配するコトじゃないから」
なんて。
パパらしくない。