「…グッバイ、ダーリン。
シーユー、バイ?」
「さようなら、愛しのアナタ。
またね、バイ、だとよッ!」
…確かに
自らの意志で
電話を切ったとしか
思えない文言で。
「…ちッ」
セイは
ちいさく舌打ちして
パパのケータイを
私のコートのポケットに
突っ込んだ。
「えッ、どうするのッ!?
まさかこのまま
諦めちゃうとかッ!?」
少女の奔放さは
セイさまのご機嫌を
そこまで
損ねてしまったのかッ。
ツカツカと元来た道を
セイはひとりで
歩いてゆくッ。
「待ってよ、セイッ!
大通りに出たセイは
坂道を駅とは反対に
どんどん
上っていってるけど。
「どこ行くのよッ!?」
「…おまえはついてくんな」
って
大通りに面した
ちいさなビルに入っていく。
「ネットカフェ!?」
怪しげな24時間の看板に
【シャワー完備】の文字。
セイは躊躇なく
受付の矢印に向って
階段を昇って行った。
「もおッ!
ヤケになったり
しないでくれるッ」
私はセイの腕を掴まえて
「私がニッタさんに
操作状況を
それとなく訊いてみるからッ」
「……」
私のセリフに
セイの足が止まる。
「警察が
ジュナさん達の居所を
掴むのは簡単だって
セイだって
言ってたじゃない?」
「……」
「ニッタさん。
私には気を許して
ポロッと教えちゃうかも
しれないよ!?」