「ケータイの
あのクソガキの後ろで

聞き覚えのあるチャイムの音が
したんだよな」


え?


セイが
聞き覚えがあると
言ったその音色。


「メロディーが
微妙に違うんだけど

確かどこかのホテルの
チャイムだったかと
思うんだけどさ」


どうしても
思い出せない、って

セイは
ネットを検索している。


「もしかして
そのホテルをネットで
探してる、とかッ!?」


「…トーコ、おまえ
いちいち声がデカイんだよ」

なんて

セイは
クールな顔をしてるけどッ。


…やっぱり

あの子のコト
見捨てたワケじゃ
なかったんだねえええええ。


おね〜さんは
本当に嬉しいよおおお。


ふふふふふ、と
セイの顔を覗き込む私に

「…おまえ、目障りだから
静かに座ってろッ」


セイは私を
自分の股の間に座らせて

私の肩に
アゴを乗せながら

キーボードを叩き始めた。


だけど


「チャイムが
鳴ってたってコトは

誰かがあの子のいる部屋を
訪ねてきたってコトだよね」


「3回連続で連打された後
2回ゆっくり鳴ってから

ダケンが、お〜う、って
返事してたから」


たぶん、訪ねてきた人間と
あの子の間で取り決めていた


「開けてもいい、の
合図だったんだと思う」


「…あの子の言ってた
おにいちゃん?」

「もしくはジュナさん、だ」