坂道を登って
10軒目。
広めのコンビニ。
かき入れ時には
まだ少し早いからか
お客さんもまばら、で。
ATMに辿り着くまでに
気になるお菓子なんかが
やたら目に入ってきて。
「目の毒だッ」
左右は見ないッ。
見えないからッ。
誘惑と闘いながら
私はATMへと
立ち読み客を避けながら
狭い通路を
足早に進んでいく。
初めてのATM体験。
「まずは千円下ろしてみて
残高を確かめよう」
って。
2回に分けて下ろしたら
手数料も
2回分取られるのだろうかッ。
「…残高照会って
無料でできないのかな」
私はATMの注意書きに
目を通すけどッ。
哀しいかな。
長々と書かれた説明文を
眺めているだけで
気を失いたくなる。
この文章がスラスラと
アタマに入っていく
くらいなら
学校のお勉強だって
もっと芳しい成績を
あげているコトだろうッ。
「…誰かに訊いて
恥をかくか。
手数料で
プライドを買うか」
手数料で
買えるお菓子達を
アタマに思い浮かべながら
私は
ATMにカードを差し込んだ。