乱れ咲き♂014


ちいさい頃から
足には自信がある。

年上のオトコノコ達にも
滅多に負けたりは
しなかったし。


セイにだって
中学生になるまで

一度も
前を走られるコトは
なかった。


「トーコちゃんみたいな
俊足を

韋駄天、って言うんだよ」


難しい表現で
そう私を
褒め称えていたのは

今考えると
セイの本当のパパだった
気がする。


「イカ天」

「イモ天」

「イダテン」って

何だか響きがおいしそうで

幼心に
すっごく印象に残ってて。


そのときの会話は
しっかりと
覚えているのだけれど

セイのパパが
どんなヒトだったのか

長い間
私は思い出せずにいた。


家に残っている
写真を見て

こんな顔だったかな、って
記憶のカケラを辿っても

イマイチ
ピンとこない。


その点。

セイのママは快活なヒトで。


よく私を
馬に乗せてくれてたし。


木登りを
教えてくれたりして

いつも
いっしょにいたからか


とっても
印象に残っていた。