セイに
私の唯一の取り柄まで
脅かされて
正直
セイのコトが
苦手だった時期も
あったけど。
セイに「愛している」と
跪かれて
初めて
その劣等感から
解放された気がした。
セイは
ライバルなどではなく
私のナイトなのだ、って
女性に生まれた
しあわせを実感する。
だけど
そんな立場に
甘えるコトなく
日夜
カラダを鍛え続けていて
よかった、って
今、まさに
その賜物に感謝するコトに
なろうとは。
「ドロボーッ!!」
「誰か掴まえてー!!」
駅前で
いくら叫んでも
道行くヒトは
かえって
犯人に道を譲るように
散ってゆくばっかりで。
まるで海が割れて
道が出来る、みたいなッ。
クリスマスの日に見た
紙芝居に
こんなシーンが
あったっけ。
「…確か
何とかのジュッカイッ」
こんな一大事に
私は何を思い出そうと
してるんだ、って
自分でも思ったけれどッ。
もう自力で
犯人を捕まえるしか
ないんだって
プレッシャーが
私を
現実逃避させたがっていた。