オトコは
お金を拾い集めると

私と目を合わせて
気まずそうに

ニタっと笑って…。


「ああああああああ!!!」


このヒト
さっきのネットカフェにいた

「店員さんッッ!!」


「ごめんね。

まだ返すワケには
いかないんだ」


店員さんは
動揺する私の懐から
ビニール袋をふんだくって

再び坂道を
掛け上がっていく。


「……」

この場合

追いかけていくべき
モノなのか。


私は判断がつかないまま
距離を置きながら

犯人を取りあえず
追いかけた。


何か変だ。


…このオトコ

私をどこかに
誘導しようとしているのかも
しれない。

直感的にそう思った。


もし犯人が
ヒト気のない場所や
建物や路地に入ったら

追いかけるのは
やめよう。


そう自分の中で
ルールを決めて

私は坂道を掛け上がる。


…もしかして

ヒメミヤ家の事件と
カンケイがあるのだろうか。


だとしたら

このまま
犯人を逃がしてしまうのも

勿体ない気がした。