ヒトの弱味につけ込んで
上手にヒトを
自分のコマにしてしまう。
セイの
あの狡猾さを
私は
身に沁みる程
よく知っているッ。
「……」
私は
ゆっくり立ち上がって
とんとん、と
ステップを踏むように
足の状態を確かめて
おじいちゃん薬剤師に
お礼を言った。
どっちにしても
今の私には
無駄にしている時間など
ない。
もし、このヒトが
セイにアタマが上がらなくて
嫌々
セイに
従っているのだとしたら。
この任務から
解放してあげるのが、一番で。
「セイには
上手く言っておきますから
データを書き換える前の
ホテルの名まえッ
思い出してください」
「…ネットカフェに戻って
画面を
その、確認、とかさッ
してみなきゃ」
テルさんの口が
どんどん怪しくなってきた。
「あ、ケータイが鳴ってる」
テルさんが
ポケットに手を突っ込んだまま
「ちょっと失礼」
ケータイに出る為に
店の外に出ようとして
通路に幅を取っていた
私のカラダを
横にどけようとして。
「…ケータイのバイブ。
今、自分でスイッチ
押しましたよね?」
私の問い掛けに
テルさんの動きが止まる。
「セイが
たまに、そういうの
やるんですよね」