…早く着かないかな〜。
セイも心配だけど
このタクシーも
相当ウザイぞッ。
セイも
確かに口が悪いし
自己中心な話しか
しないけど。
このヒトみたいに
反論してもしかたない
なんて
思うコトはない。
いつだって
話していたいし。
いつだって
真っ直ぐに
向き合っていたい。
それは
セイ自身が魅力的なのか
私のアタマが
恋ボケしているのか
自分では
わからないけれど。
…逢いたい。
傍にいたいよ。
セイ。
なのに
こんなときに限って
道は渋滞で。
動かないタクシー。
「おかしいな。
今日はゴトオビでもないのに」
事故車でも出たのかな、って
ドライバーが
ラジオをつける。
「この季節は
プロ野球もやってなくて
ラジオもつまらんな〜」
ドライバーは
せわしなくラジオの選局を
切り替えていた。
「交通情報、交通情報、っと」
…元々が
独り言が多いタイプなのか。
答えてあげない私が
悪いのか。
ラジオから
ニュース速報が聴こえてくる。
「何か
おおきな火災が
あったらしいんだって」
ニュースを
繰り返さなくても
私にも聴こえてますからッ。
後部座席のシートに
溜息とともに深く沈む。