「他の幽霊とかは
全然、見えないみたいでね」


「…特定の幽霊だけ?」


「幽霊じゃなくて
”魂”なんだと思う」


ジュナさんは
努めて真っ直ぐに
私を見てますけれどッ。


幽霊だろうが

魂だろうが

会話の内容は
相当イカれてると思いますッ。


「…この子は

『彼』の”魂”の
メッセンジャーだから」


どこでどう間違って
伝わったのか。


気がつくと
『彼』のファンの間に

この子は
『彼』の生まれ変わりだと
ウワサになっていて。


「エスカレートしすぎた結果が
この始末、よ」


ジュナさんは
少女の硬い髪を
愛おしそうに撫でた。


「…だいたい
暗くしたくらいで
お手軽に
『彼』に逢えるというのなら

世界中から
灯りという灯りを
無くしてやるわ」


なんて。


ジュナさんはどこまで
『彼』の信者なのか…。


「鼻血、止まったみたいね」

「あ…」

「トーコおねえさんに
洗面所を
教えてあげてくれる?」

「おうッ」


野生の少女は
私のコートを
乱暴に引っ張って

私を
隣りの部屋へ連れて行った。