ガラス張りの
広いバスルーム。
まあるいバスタブの向こう
街並みが見渡せる。
洗面所の部分だけでも
ウチの和室くらいありそうで
無駄に広い。
もうすっかり
日も落ちてきて。
オレンジ色と紺色が
混じり合う境界が
とってもキレイだ。
「……」
鏡に映る自分の
無様な顔とのギャップに
思わず落ち込みそうになる。
金色の蛇口に
野生の少女が手をかざして
どうやら
お湯の出し方を
教えてくれているようだ。
「凄いね。よく知ってるね」
「おうッ!」
少女はさらに
タオルを私に
差し出してくる。
「…あ、どうも」
えらくよく気がつくな。
ヒトのコトなんて
世話を焼くような
イメージなんて
なかったんだけど…。
…まさかッ!
『彼』の魂とやらが
やらせているんじゃ
ないだろうなッッ。
背筋に寒いモノが
走って
ポケットの中の
ケータイが
鳴るッ!!!!!!!!
「……」
パパのケータイから
聴こえてくる
映画音楽の着メロが
臨場感をやたら煽ってきて
鏡やガラスに映っている
自分と目が合うのさえ
恐いぞおおおおおお。
「あろ〜お」
少女が私のポケットから
ケータイを取り出して
電話に出た。
「おう。おう」
少女は
電話の相手の言うコトに
やたらと元気に
答えてるけどッ。