ジュナさんが
自分のアタマにしていた
シルクのスカーフを

惜しげもなく
私の血だらけの顔に
押し当てた。


「…ずいまぜん」

「謝るのは私の方よ。

トーコちゃんの後ろに
怪しい人影があったコトに
気づいてて

わざと無視したりして…」


え?


「犯人を捕まえてやろうなんて
色気を出さずに

気づいたときに
大声を出して

トーコちゃんに
教えてあげればよかった」


ジュナさんが
後悔する。


「気づいでだんでずが!」

「うん」


だから
わざとタクシーに乗って
犯人を
安心させたんだけど、って。


おいッ。


犯人を捕まえたいって気持ちは
よおお〜っく
わかりますけれどッ。


私ってば

思いっきり
オトリにされてたんじゃ
ないですかいッッ。


「とにかく
ホテルで
治療して貰いましょう」


歩ける?、って

ジュナさんが
肩を貸そうとして
くれたけどッ。


「…自分で歩げばずッ」


スカーフで顔が半分
隠れているのをいいコトに

どさくさに紛れて

ジュナさんを
ちょびっとだけ
睨んだりしてッ。


…私って、小心者ッ。


だけど。


…これで堂々と
ホテルに入るコトができる。


「……」

私はジュナさんの後ろを
黙ってついていった。