…セイが
このホテルのどこかに
侵入しているハズで。


ジュナさんと
いっしょにいれば

セイと合流できるのは
時間の問題のハズだった。


だけど

私みたいなのが
こんな状態で
ホテルに入ったりしたら

それこそ
ヒトの目について

警察にだって簡単に
居所を
知られてしまうのでは
ないのか…。


ジュナさんの
考えてるコトが

…わからない。


傍にあった
駐車場と繋がっている
玄関ではなく

ジュナさんと私は
正面玄関から
ホテルに足を踏み入れる。


…目がくらみそうな
シャンデリアに
気を取られては

ふかふかのカーペットに
何度も
足を取られそうになった。

甘い香りがするロビーには
ネットで見た

少年画伯のおおきな絵が
一番目立つトコロに
掛けてあった。

「……」

「どうしたの?
早く乗って」

エレベーターの中から
ジュナさんが

絵の前で
足を止めてしまっていた私を
手まねきしている。

私は小走りして
エレベーターに乗り込んだ。


「凄いでしょ。『彼』の絵」


何故か自慢げにする
ジュナさんのコトバに

鼻を押さえたまま
私は黙って

2回程おおきく頷く。


「でも、あれ、贋作だから」

えッ。


「ホンモノは
ちゃんとした環境で
大切に保管されてるわ」

「……」

最高級なんて
謳われてるけど

意外とケチ臭いホテルだッ。


「『彼』の絵は
世界遺産クラスだから。

何かあったら
世界の損失だもの」