「……」

たかだか
ひとりの少年が描いた絵だ。

しかも近年まで
生きていたヒトで。


どうしてそこまで
崇め奉る
価値があるというのか。


…ヒメミヤさん家を
つけ狙っているという

過激な犯人達も
『彼』の熱烈な信者で。


野生の少女を
『彼』の生まれ変わりだと
信じていて。


「……」

ジュナさんを
過激な信者と同じに
見てはいけないと

わかってはいるけれど。


何か変だ。


『彼』は野生の少女の母親の
元カレで。

少女の母親は
ジュナさんとは
義理の姉妹になるんだよね。


自分の兄嫁の
元カレなんて

フツーは
いい印象なんて

持てないと思うんだが。


…どうも解せないッ。


しかも

犯人は
拳銃を持っていたのに

それでも
警察を頼ろうとしないのも
とっても不自然で。

不可解だ。


エレベーターを降りて

ジュナさんの後ろについて
歩いてはいるけれど。

何だか
ついていっては
行けない気がして…。


私の足が
止まってしまった。


「トーコちゃん
どうしたの?」

足が痛むの?、って

ジュナさんが
こっちに向かって歩いてくる。


私は鼻を押さえていた
スカーフを取った。


「ケンちゃんは
本当に
ここにいるんですか?」


「……」

私の質問に
ジュナさんの歩みが止まる。