「どうして?」

「……」


黙り込む私に

ジュナさんは
ちいさく笑い掛けて。


「そうよね。

こんなに
堂々と出入りしてたら
すぐに見つかりそうだものね」


「ってゆ〜かッ!!

あの子
今、ひとりで
どうしてるんですかッ!?」


ホテルの部屋なんて
凄く薄暗いのにッ。


「今頃、あの子
大泣きしてるんじゃ…!!」



「…大丈夫よ」

「だから、何が
大丈夫なんですかッ!?」


「……」
「……」

どうして黙ってるんだッ。

この沈黙に
苛立ってしまうッ。


カンケイのない私やセイが
こんなにも必死になって

あの子の安否を
気遣っているというのに!


ポタッ。

「あッ」


アタマに血が上ったら
鼻血がまた滴り落ちてきて

廊下のカーペットを
汚してしまったああああッ。


「どおおおしよおおおおおッ」

高そうなカーペット。

その場に跪いて
血の跡を指で拭おうとして

また

ポタり。


「うぞおおおおおおお」

慌ててスカーフで
鼻を押さえてももう遅いッ。


「そのままにしてて平気よ。

部屋から
連絡を入れておくから」


ジュナさんはそう苦笑して

また歩き出す。