…ジュナさんは
そう言うけれど
身を隠している人間が
こんなにも簡単に
他のヒトから
不審に思われるような
マネをするのって
あまりにも
大胆すぎないかッ。
「……」
ツキーン!
立ち上がろうとして
挫いていた足に
痛みが走る。
…何か
どんどん
カラダがボロボロに
なっていてッ。
どこか割り切れない
気持ちを抱えたまま
私はジュナさんの後を追う。
…野生の少女の
無事を確認したら
セイを説得して
すぐにでもこの件から
手を引こう。
こんな危なっかしいヒトと
あの子を守るなんて
とてもじゃないけど
出来っこない。
そんな私の思惑なんて
気にもしていないのか
ジュナさんは
奥の部屋のドアを
カードで開けて
私を招き入れた。
「……」
高い天井。
カメラが何台も
あちこちに設置してあって。
高級ホテルとは
思えない程
カーペットや壁が
薄汚れている。
そして何よりも
「このニオイ…」
油のニオイとでも
表現すればいいのだろうか。
学校の美術室みたいな
独特のニオイで。
ロビーの
やわらかな香りからは
想像もつかない。
置かれているソファーも
高そうなのに
ペンキか何か
とりどりの色が飛び散るように
こびりついていて。
…なんかだらしない。
「やっぱり
シミにならないうちに
さっきの血の跡
拭きとっておいた方が…」