ここのホテルの
掃除の技術は
当てにならないッ。
「ああ、この部屋は
わざと汚れたままにしてるの」
私のココロを読んだように
ジュナさんが
コロコロと笑い出した。
「わざと、って」
どんな趣味だッ。
「この部屋は
『彼』がアトリエにしていた
当時のまま
保存してあるの」
「…アトリエ」
通りで油臭いハズだ。
だけど。
「この部屋
監視されているんじゃ
ないんですか?
勝手に入ったりして…」
「ああ、あの監視カメラなら
もう使ってないから」
監視ルームの方が
閉鎖されちゃってるんだと
ジュナさんは
さらりと説明して
この部屋の奥にある
ドアの前に立った。
カードを
ドアに差し込んで
ジュナさんが
ドアのチャイムを鳴らす。
教会の鐘の音。
暗号のような
独特な鳴らし方。
中から
「おう!」
聞き覚えのある声が
聴こえてきて。
「ケンちゃん!!!!」
「おう?」
思わず私は
野生の少女を抱きしめた。