「きゃあああああああああ」


扉の中から
細い腕が伸びてきてッ。


「…バカトーコッ」


えッ。


その聞き覚えのある声に

指の間から恐る恐る
扉の中を覗くと…!!!


「…おまえら
ふたりして俺を殺す気かッ」


汗だくになったセイが
出てきた…。


「この駄犬がッ!

外からカギなんか
掛けやがってッッ!!!」


セイが
少女を追いかけ回すッ。


「うほほほほ〜う♪」


少女は鬼ごっこを
楽しむように
部屋中を
駆け回っているけれどッ。


…何なんだッ。



少女が逃げ場を失って
私の背中に回り込んできてッ。


「その駄犬を
こっちによこせッ」


…セイってば
自分を見失っているッ。


あんな狭い場所に
長時間
閉じ込められてたんだから

無理はないけれど。


「…セイ、汗拭いたら?」

努めて冷静に
話し掛けたつもりだった。


のにッ。


自分のTシャツを
捲くり上げたかと思うと

私のアタマを
鷲掴むようにして

ゴシゴシと

私の顔で
自分の胸元の汗を拭くッ。


私の顔を
タオル代わりに
使うんですかあああああ。


「おおう…」

少女が目をまるくしながら

私の背中越しに
こっちを見ていてッ。


「セイッ。
教育上よくないよッッ」


私のセリフに

セイの動きが
ピタリ、と止まる。