「ダケンッ!

いくら
羨ましそうに見てても

おまえには
”スプレー”してやんないぞ」

って。


アンタはオス猫で
私はその縄張りですかッ。


「ちいさい子に
当たるのは
やめなさいよねッ」


そもそも

こんな小さな子が

こんな高いトコロに
セイを詰め込めるハズもなく。


「自ら進んで
家具の中に
入ったんでしょう?」

「……」


セイが
私の後頭部を掴んだまま
キッツイ目で私を睨んでる。


「だいたい
どうしてあんなトコロに
入っちゃってたの?」

「……」


「ナイショなんだよなッ」

野生の少女が
セイの代わりに代返した。


「…この子の
お絵描きのお相手をしてた
おにいちゃんって

やっぱり幽霊なんかじゃなく
セイだったんだ?」


「……」

セイが溜息をつきながら

ソファーに
どっかりと腰を下ろして。

私をさらに
自分の胸に抱え込む。


「…セイはどうやって
この部屋に忍び込めたの?」


「まあ、いろいろ。

幸い、このホテルに
でっかいコネがあったんで」


…でっかいコネって
どんなコネじゃ。


コネで入れるくらいなら

警察や犯人だって
簡単に辿り着けそうな
モノだけど。


「コネを使って
フロントで
宿泊名簿を調べて貰ったら

あのオンナ

このホテルに別の部屋を
自分の父親の名前で
リザーブしててさ」