だけどその部屋のベルは
教会の鐘の音ではなく。
「あのオンナが
その昔、このホテルで
『彼』の作品創りを
手伝ってた、って
書き込みを思い出してさ」
案の定、保存目的で
閉鎖されていた
怪しすぎるワンフロア。
「どうやって
侵入しようかと考えてたら
ヘリの炎上騒ぎがあってさ」
批難の為に
一時的にVIPフロアの
あらゆるカギが解錠されて
「どさくさにまぎれて
部屋に忍び込めたってワケ」
「…セイが
ヘリに火をつけたんじゃ
なかったんだあ」
ほおおおおおおお。
そのひと言に安堵した。
「当たり前だ」
火つけは
昔から大罪だぞ、って
エラそうに言ってるけどッ。
セイのパパの実家の扉に
火をつけてたの
もう忘れてるッ。
「アトリエの奥。
ドアストッパーが
中から掛かってて」
教会の鐘の音。
ケータイで聞いた通りに
ベルを鳴らすと
おバカな駄犬が出てきて
「扉を開けちゃって
るんだもんな。
あまりの
あのオンナのずさんさに
笑っちまったよ」
…そのおバカな駄犬に
閉じ込められたのは
どこの
どなたですかッ。
って
思わずツッコミを
入れてしまいそうに
なったけど。
セイに
抱え込まれてる体勢で
そんな暴言を
吐いてしまう程
私はおバカではない。