「あのオンナの帰るのを
待ってたら

あのオンナ
誰かを連れてるじゃないか」


共犯者かも、って
慌てて身を隠したのが
あの場所で。


「まさかこの駄犬が
ご丁寧にカギを掛けるとは
思わなくってさ」


…この部屋のドアも

同じタイプの
ドアストッパーだから。


「声があまりに違うから

部屋に入ってきのが
おまえだって
確信が持てないしッ」


…確かに
鼻血出してたから
鼻声だったかも。


「ケータイを鳴らしてみたら
駄犬が出るしッ」


…霊界からの
コンタクトかと思ったからッ。


「あのオンナには
無様なトコロを
見られたくはなかったしッ」


「いでででで〜ッ」

セイが
私のホッペを引っ張って。


「それに
火事だとわかっているのに

この部屋にガキをひとり
置き去りにしたまま
帰ってこないなんて」


ちょっと
あのオンナの考えてるコトが
わからなくてさ、って

セイの指に力が入るッ。


「いだだだだだだああああ」


「…おまえこそ

どうやって
あのオンナと接触して

この部屋に
入れて貰えるコトに
なったんだ?」


「え〜っと。それはッ」


どこから話せば
いいのやらッ。


「…血がついてる」

えッ。

セイが
私の着ていたコートを
おおきくめくった。


「こんなに大量の血
どうしたんだ…!?」


トーンを押さえては
押さえているけれど

私の洋服に
こびりついていた
その血の跡を
目の当たりにして

その声はとっても
怒りに満ちていた。