「ケンちゃん。
あんまり飲むと
おねしょ、しちゃうから」

「おじちゃんが
ご本を読んでやろうな」

パパが野生の少女の
手を引いて
寝室に消えていった。


「絵本なんて
ウチにあったっけ」

「寓話集とか分厚い本なら
パパの蔵書に
ケッコーあるわよ」


…絵がなくても
子どもは
納得するモノなんだろうか。


そ〜っと様子を
覗いてみたら

案の定

ヨーロッパの
オシャレな寓話集は

少女に乞われるまま

みにくいカエルが
主人公に変わっていてッ。


…パパはどういう風に
話を終着させるつもりなのか。


少女んの目は眠るどころか

ますます
嬉々としてきている。


「……」

延々と続く物語に

最初に根負けしたのは
何を隠そうこの私でッ。


「…寝よっかな」


私は自分の部屋に戻った。


ひさびさの自分の部屋。


「やっぱり自分のベッドが
落ち着くな〜♪」


冷たいセンベイ布団に
電車のシート。

質のいい睡眠なんて
程遠くて。


スプリングが
古くきしんでても

このベッドの
何とありがたいコトか!


気がつくと

部屋の電気も点けずに
ベッドの上に倒れ込んでて。


「…疲れたあ…」


緊張から
解放されて

私は泥のように
眠り始める。