ヘロヘロと
セイに笑い掛けながら

その場の空気を
誤魔化すように

私は
バスルームの扉を開けた。


「ゲッ!?」


風呂釜の蓋の上

タオルをぐるぐると
回しながら


「おッ、おッ、おううううッ

かっとば〜お〜!
おうッお、お〜!」


ぴょんぴょんと
飛び跳ねていてッ。


「危ないから下りなさいッ」

私は
泡だらけのハダカの少女を
抱きかかえた。


「…どういう教育を
受けてるんだッ」


とんでもねえ駄犬だな、って
セイがバスルームを
覗き込んできて。


「きえええええええええッ」


私の肩越しに
セイの素顔を直視した

野生の少女の雄叫びが
バスルームに
反響するッ。


「セイッ!
仮面をッ!!!」


野犬どころか
野猿と化した少女が

必死にセイの方へ

ツメを立て
その腕を伸ばしててッ。


「なあに?
何の騒ぎ!?」


廊下から聞こえてくる
訝しげなママの声に

セイと目が合った。


「ったくッ」


セイが
傍にあった濡れタオルで
野生の少女のアタマを
ぐるぐる巻きにして

野生の少女を
お湯の中に突き飛ばすッ!


セイいいいいい!!!!!!!

何をするんじゃああああ。