お湯の中
パニックする少女を
私は必死で抱き上げたッ。
「入るわよ」
やだッ、待って!
ママッ!!!!!!!
濡れたタオルが
少女のアタマに絡みついて
【幼児虐待】
嫌な4文字熟語が
アタマに浮かぶ。
「やだ、もおおおおおッ」
慌てれば慌てる程
ますます取れないッ。
「あら、まあ」
ママの声がする方に
顔を向けると
ドア越しに
隠れていたセイが
ママの背後から
抱きしめていてッ。
「トーコが
駄犬を風呂に入れてるの
俺、知らなくて」
うっかりバスルームで
服を脱いでしまったと
ママの耳元に
甘い声を響かせているッ。
「シャワーは後にするよ」
セイは
何もなかったかのように
仮面をつけて
「バスルーム
空いたら教えて」
ママの背中を
長い腕でぽんっと
押し出して
リビングの方へ戻っていく。
「トーコがついていながら
何やってるの!」
ママが少女の顔から
濡れタオルを取り外して
「ぶあはッ」
少女がおおきく息をした。
「…大丈夫?」