カーペットの上には
ちいさな子ども服が
いっぱいで。
「なつかしいでしょ。
アナタ達が
ちいさい頃に着ていた服
ケンちゃんに
どうかと思ってね」
ママが
私のちびTシャツを着ていた
野生の少女の胸に
洋服を当てて。
「おう?」
少女の眉間にシワが寄った。
「あら。おかしいわね」
この子、どうして
フリルが
似合わないのかしら、って
今度はママの眉間に
シワが寄る。
「…オンナノコが
みんなフリルが似合うとは
限らないから…」
ママはもう忘れてる。
そのフリルやレースの服達は
私じゃなく
セイが
着せられていたんだよッ。
私は冷蔵庫から
紙パックのジュースを
取り出して
ママの疑問に答えずに
「行ってきます」
玄関に向かおうとした。
「あら、トーコ
どこにいくの?」
「……」
…制服に着替えて
学生カバン持って
どこに遊びに行くと
ゆ〜んじゃッ。
「今日、トーコのクラス
インフルエンザで
学級閉鎖だって
連絡があったけど」
って
おいいいいッ!!!!!!
「ど〜して、それを先に
教えてくれないのおおおおお」
「おまえが
訊かなかったからだろ」
「ムッ!」
そのにっくったらしい声に
振り返ると
「でッ」
金髪に青いコンタクト。
毛皮のロングコートを着て
ゴージャスに女装したセイが
ベーカリーショップの
袋を持って
立っていて。
…誰かと思ったッ。