一触即発な空気が
流れる中
クロワッサンを
ふたつ咥えた
駄犬のケンちゃんが
「トーコはまだまだ
オコチャマだからなッ」
聞いた風な口を利くッ。
だけどッ。
ここはやはり
オトナの余裕を見せるべきで。
「…お皿に入れて
座って食べようね」
私は笑顔をつくって
野生の少女に
お皿を差し出した。
「セイ。
ママ、カフェ・オレが
飲みたいわ♪」
やっぱり
クロワッサンには
カフェ・オレよね〜、って
空気を読んだのか
読めなかったのか
ママが
セイにリクエストして。
セイが私を睨みながら
キッチンに消えていく。
…私が
何をしたっていうのよッ。
「ねえ、ねえ。
トーコは
どれがいいと思う?」
「…この子に好きなの
選ばせれば?」
セイの態度に
引きずられるように
私のモノ言いも
自然とツンケンしてしまう。
「ケンちゃんは
今着ている
ぶちゃイヌのTシャツが
気に入ってるのよね」
「おうッ」
「だったら
そのままで
いいんじゃないの?」
「でも、この格好で
外に出すワケには
いかないでしょ?」
って。
「もしかして
おウチのヒトが
迎えにくるとかッ!?」
「ず〜ず〜しくも
公園に行きたいんだと!」
セイの声が
キッチンから聞こえてくる。
…公園に
野生の少女を
「連れていくうううう!!?」