「だってさ」

本当にこの子の命を
狙っているのであれば


「駄犬の母親といっしょに
始末してたハズだろ?」


「…それはウチのママが
この子の傍にいたから

狙えなかったんじゃ
ないの?」


「ふ〜ん」

そう思う?、って

セイが私を見下ろした。


「…ちょっと来いよ」

セイがエラそうに
自分の部屋に
入って行くけどッ。


女装とはいえ

キレイすぎるオンナの
高慢さには

どこか反発したくなるのは

哀しいオンナの性なのかッ。


「何してる!」

早く来いよッ、って
セイの部屋から

短気な声が聞こえてきて。


「……」

不本意ながら

恐る恐るセイの部屋に
入室する。


「これ、読んで」

起動させたパソコンの前に
セイが私を座らせた。


「…ファン・サイト?」


「そう。

数年前、夭折した
孤高の天才画家の、ね」


そのファンが
立ち上げたと思われる
私設ホームページには

画家の作品の紹介や
解説とともに

『彼』の人生が
詳細に綴られていて。


繰り返し
ひとりの女性の名前が
実名表記されていた。


「…これって」

「そう、駄犬の母親」