「だから
誘拐をされる可能性は
あっても
あの子自身が
命を脅かされる
心配はない、ってコト」
「……」
熱狂的なファンの
歪んだ想い。
「そんな変な
思い込みをするような犯人
何をするか
わかったモンじゃない」
「…だったら
ウチでは
面倒みきれません、と
警察の手に渡して
どこかにあの子を
ひとり閉じ込めて貰おうか?」
…セイは意地悪だ。
いつもだったら
こんな面倒なコト
巻き込まれるのは
ゴメンだ、って
真っ先に反対する
セイなのに。
どうして
今回に限って
こんなにも協力的なのか。
「おいッ、オンナどもッ。
何をグズグズしているッ。
公園に行くぞッ」
野生の少女が
ドア越しから
こっちを見ている。
「今、行くから
玄関で靴履いて
待っていろ」
セイが少女に指図して
「おうッ!
遅れを取るなよッ」
バタバタと
少女が廊下を走る音がした。
…えらく
やさしいんだね。
「…父さんがさ」
「え?」