「トーコって
ぶちゃカワだなッ♪」
野生の少女が
サングラスを少しズラして
俯いていた私の顔を
嬉々として覗き込んでてッ。
「…ぶちゃカワッ」だとッ!?
なついてくる少女に
我ながら大人気ないとは
思いつつ
睨みを利かせて
威嚇してしまうッ。
「俺のトーコに
馴れ馴れしいヤツだなッ!」
少女から私を引き離すと
セイは
足で乱暴に
少女を
エレベーターの端っこに
追いやった。
「おうッ!?」
…子ども相手にッ。
「外でも
そんなコトしてたら
幼児虐待で
すぐに通報されちゃうからッ」
「単なる
コミュニケーションだ」
俺達は
愛を深めあっている、って
セイってば
少女の背中を
ヒザでグリグリ、してッ。
「おおお〜う♪」
…少女が悦んでいる。
「……」
何だか
すんごい不安になってきた。
「やっぱり
ウチに戻ろうよ」
私はエレベーターの
自分の部屋の階の
ボタンを押した。
「いいのかな〜」
そんなコトして
俺は知らないぞ、って
セイが冷たく言い放つ。
「この駄犬が
今朝
チェーンを自分で開けて
勝手に外に出ようとして
大騒ぎになったの
おまえは爆睡してたから
知らないモンな〜」
えッ。
「運よく
エレベーターの前で
掴まえたから
よかったけれど」
また、同じコトされたら
面倒じゃないの、って
金髪美人が
私のアゴをちいさく摘んだ。