野生の少女が
セイの毛皮を引っ張っては

早くここから出せと
要求しているけれど。


「オトナはいいんだよ」


なんて

自分勝手なコトを
口走るセイは

充分、子どもで。


「今、取り込み中だから」

「あんッ」


でも

どこまでもセクシーだった。


「おおう?」

セイの大きな手が

野生の少女の目を
サングラスごと塞いでて


わたわた、と

少女がバタついている。


…ごめんね♪

ちょっとだけ我慢してね。


ココロの中で
手を合わした。


マンションの裏手側。

事故現場を
回避するルートを取りながら

公園に向かう。


「警察のヒト
どうしたんだろ」

どこにも
それらしい姿がない。


たったそれだけのコトなのに

その事実が

私をひたすら
不安に追い立ている。


「向こうさんだって
プロなんだから

上手に尾行してるんだろ」


トーコは
刑事ドラマの見過ぎだ、って

セイは鼻で笑ってるけどッ。


「ほら
キョロキョロして歩いてっと

おまえが事故るぞ」


「…わかってるよッ」


信号を見つける度に
駆け出そうとする少女の手を

私は
しっかりと握った。