「お話が終わったら
『彼』はきっとママを
返してくれるから」
あと少しだけ
待ってようぜい!、と
「…お、おうッ!!!」
ふたりが空に向って
力強くコブシを突き上げる。
ふたりの世界。
オブザーバーのように
ふたりを見守っていたのに。
「もしかして
アナタがトーコちゃん?」
突然、話をこっちに振られて
「あ、は、はいッ」
不覚にも
ちょっとビビってしまったッ。
「この子が
世話になったみたいで」
「いえ…」
「トーコはお風呂
いっしょに入って
ミサイル発射したッ。
トーコのスイッチ…」
私は慌てて
少女のおしゃべりな口を
手で塞いだ。
お願いだから
余計な報告だけは
しないでくれえええ。
「あは、あは、あは」
私は必死に笑ゴマする。
でも、私なんかに
たいして興味がないのかッ
「で、こちらの女性は…」
ジュナさんは
いつの間にか
私達に追いついていた
セイに視線を向けていてッ。
「セイです」
「うそッ!?
キミって
ニューハーフだったんだ!」
どうみても
女性にしか見えないセイを
興味深げに
しげしげと観察して
「電話の声からは
若いオトコノコだとばかり
勝手に想像してたから」
唸り捲くってる。
だけど
電話なんていつの間にッ!?
私がこの子を
お風呂に入れていた間に
ウチの家族は
何をこそこそ連絡を
取ってるんだッッ!!!!