…エレベーターの中で
この子の顔を
これで拭いたんだったッッ!
真っ赤なルージュが
べったり、と。
こんなモノ
貸せるワケもなくッ。
慌てる私の目の前に
「ハンカチッ!」
少女が差し出してくる。
…ママがこの子に
持たせたのか。
それは私のブチャイヌの
キャラクターハンカチでッ。
「…ありがとう」
って
ニッタ刑事は
私を乗り越えるようにして
少女の手から
奪い取った。
額の汗やら
首の汗。
拭ける部分は
み〜んなそれで拭ききって。
「ああ〜♪」って
頬を染めて
満足そうにハンカチを
頬に当てているッ。
…ハッキリ言って
気色悪いぞッ。
「いい加減、返せよなッ」
少女が
オトコに手を差し出して
ハンカチの返還を要求して。
「いいんですッ。
そんなハンカチでよかったら
差し上げますからッ」
私は少女を
自分の膝の上に引き寄せた。
「えッ、いいのッ!?」
そのオトコの顔が
パッと輝いて。
…ちょっとどころか
すんごくヒイタッ。
「や〜ね〜。
ニッタくんたら。
女子高生から
ハンカチ貰って悦んでるッ」
女性刑事が
そのオトコをからかった。
だけどッ。
和やな穴の外とは
一変して
「……」
私の背後から
ただならぬオーラが
漂ってくるッ。
…振り向くのも
恐いんですけどッッ。