カチャ。

「何?」

開いたドアから
セイの手が見えて。


「今日は
お魚の特売日なんだけど〜♪」


ママはセイに
スーパーのチラシを
見せた。


「…母さん。
買い物なら俺が行くから」

「あら、そお?
じゃあね、ついでに」

お使いゴトも
頼まれてくれる?、って


ママが
エプロンのポケットから
何やらメモを
取り出して。


そのメモに
目を通したセイが


「あのガキの着替えを
取りに来い、だと!?」


セイが
おおきな声を上げる。


「アナタ達が
公園に行っている間に

警察のヒトから
連絡があって」


近くの交番まで
取りに来て欲しい、と

ママに電話してきたらしい。


セイが
恐らく眉間にシワを
寄せているんだろう。


ママが

「大丈夫よ。だって、交番よ」

必死になだめてて。


「……」

金髪のカツラを被ったセイが

ママを押し退けるように
出てきて

こっちに向って

ずんずん、ずんずん
近づいてきたッ。



ひえええええええ。

何で私のコト
睨んでるのよおおおお。


「トーコ
おまえのケータイをよこせ」


「…何でよッ!?」


私の問い掛けよりも

鷹の目のように
素早く

野生の少女の傍にあった
私のケータイを見つけて。


「やだッ!
どこにメールしてるのッ!?」


取り返そうとする
私のアタマを

セイの長い腕が阻む。