私は不本意ながらも
少女をセイの部屋から
引き離そうとした。
のにッ。
「おい、トーコ」
セイがオトコの格好で
部屋から出てきてッ。
「お…」
少女とセイが
見つめ合っている。
泣くのかッ。
噛みつくのかッ。
どっちにしても
私のせいでは
ありませんからッ。
私は半歩後ろに下がった。
「おまえッ。
オトコのクセに
何のヘンテツもない
面白味に欠ける
つまらない顔だが」
ちゅうが上手いから
許してやるッ、って
少女が
セイを指さして
高らかと宣言するッ。
「人間は顔ではない、って
ママも言ってたしッ。
個性がないからって
ヒカンして
オンナの格好なんか
しなくてもいいぞッ」
お嬢ちゃんッ。
セイの前で
何て恐ろしい
コトをおおおおおおおッ。
しかも
何故にそんなに
”上から目線”ッ!?
「……」
「……」
「……」
うわわわわ…。
この凍てついた空気は
何ッ!?
私はこの場から
逃げ出そうと
足を後退させた瞬間。
「…おい、トーコッ」
「はいッですッッ!!」
セイの声が
凍てついた空気を割いたッ。
「出かけるぞ」
「はいッ!?」