セイが
私にコートを着て来いと
静かに命令してるけどッ
この状況で誰がNOと
言えるだろうかッ。
私は素早く支度するッ。
「母さん。
電話がかかってきても
絶対に出ないで」
誰かが来ても
居留守を
決め込むように、って
セイが
ママに指導する声が
聴こえてきた。
…セイと私がいなくても
本当に
大丈夫なのだろうか。
電話と玄関電話には
【出るな】って貼り紙で
受話器を封印してあって。
「大丈夫よ〜」
…今朝
公園で起こったコトを
知ってたら
さすがのママでも
そんなセリフは
言えないと思うッ。
ママに報告しなかったのが
吉と出るのか
凶とでるのか…。
ママと少女を家に残して
マンションの部屋を
後にした。
「やっぱり
買い物も交番も
ママと私が行く方が
いいんじゃないのかな。
あのふたりじゃ心配だよ」
「おまえが心配しても
何の役にも立たない」
セイは冷やかに
言い切ってッ。
「母さんを
外に出したりしたら
顔の広い母さんのコトだ。
きっと今朝の騒ぎを
どこかで聞きつけてくるだろう」