「嫌だッ!
帰るッ!!!!」
「安心しろ。
俺がついている」
アンタが不安にさせて
いるんでしょおおおがあああ。
マンションのエントランスで
セイにコートを引っ張られ
捕獲されてッ。
「犯人とか言ってるけどッ。
どうせニッタさんでも
私のケータイを使って
呼び出して
恥をかかせて
笑い者にでもする気
なんでしょおおおッ!?」
私の暴言に
セイの動きが
ぴたり、と止まった。
「…トーコのクセに
鋭いじゃないか」
って。
当てずっぽうで
言ったのにいいいいい。
セイってば
どこまで自分のライバルを
追い詰めなければ
気が済まないのかッ。
「とにかく
ここでパンツを
脱がされたくなかったら
黙って俺についてこいッ」
その有無を言わせぬ
強引さッ。
セイッ。
アンタは
昭和のオトコですかッ。
首根っこを掴まれたまま
私はズルズルと
セイに
引きずられるようにして
連行されるッ。
通行人もいない道。
だけど
きっとどこかから
張り込みの警察官が
私達のこの様子を
見ているに違いなくて。
こんな痴話喧嘩。
ああ〜、恥ずかしや〜。
「まずは
スーパーで買い物だ」
セイってば
何を張りきっているのやらッ。
「買うモノ、買って
受けとるモノ、受け取ったら
すぐに帰るんだからねッ」