…あんなちいさな子どもを
孤独にする?

「そんなコトをして
誰が何の得をするって
言うのよ!!!」


思わず
私はセイに訴える。


「…あるんですよね。

立派な理由が」


「……」

ニッタ刑事は
黙りこんだままだったけど。


肯定もしないけど
否定もしないっていうのは

セイの言っているコトは
的外れではないと

認めているようなモノで。


「どうせ犯人は

敬愛する少年画家の魂を
あのガキの中から
目覚めさせようとか

バカなコト
考えてるんだろう」


愛情に飢えていた施設時代に
覚醒したとされる

『彼』の稀有なその才能。


「同じ目にあわせたら
あのクソガキの中の
『彼』が目覚めるかも、って

本気で思っているのかね」


セイは
コトバを吐き捨てた。


「…目覚めさせるって」


そんなコト
本気で考えるヒトが
いるなんて

信じられない。


だけど。


白昼の児童公園で
車を爆破させたりするような
人間の

考えなんて


理解できなくて
当然なのかも
しれなかったけど。


だけど。


「だとしたら

あの子母親を
死んだ『彼』の元に
送りつけるんだって
いう理由と

矛盾してない?」


私のツッコミに
セイが私の顔を見た。


だけど


「…単純に
あの子の母親が
許せなかっただけだと思う」


私の疑問に答えたのは
セイではなく

ニッタ刑事だった。