オジサン刑事が
意外な見解を口にして。

「何でもそう
飽きたら乗り換え

気が向いたら戻ってくる」


そんなオンナだって
言い切った。


…エレベーターで
見かけたコトがあったけど

そんな風なお母さんには
見えなかったけど。


見かけじゃ
わからないモンなんだな。


私は手早く
カバンの中身を
元通り詰め直して

受け取り証にサインする。


「何か書くモノ
お借りできますか?」


セイは白い紙に

【お子様は大事に大事に
自分の家の子どものように
愛情いっぱいに接しますので】


心配されないように、と

一筆したためて。


「あのガキのご家族に」

渡してください、って

オジサン刑事に
手渡した。


…如才ないセイらしい。


普段はワガママばっかな
オコチャマだけど


こういう配慮が
さりげなく
できたりするから

憎らしいッ。


だけど


「その文面を犯人が見たら
逆上しそうだよな」

って


ニッタ刑事のひと言に

背中が凍る。


…まさかッ。

犯人を挑発してるとか
そう言う意味で
書いたんじゃないよねッ。


私は思わず
セイの顔を見た。


「ふふん」

セイは軽く鼻で笑って。


「別に犯人の目に
触れるワケじゃなし」


余裕然と答えてる。