「…頼もしいねえ」

オジサン刑事が
セイのコトを

無責任に

持ち上げるだけ
持ち上げといて


「ちょっと失礼」

犬にエサを上げるのを
忘れていた、と

表に出て
どこかにケータイで
連絡を入れていた。


「おやっさん。
ああ見えて独身でさ」


ちいさくて可憐な
かわいいワンちゃんと
ふたり暮らし。


「犬の写真
見せて貰ったコト
あるんだけどさ。


リボンなんかつけてて

もう全然
キャラじゃないのッ」


ニッタ刑事が
私達に耳打ちして

周りの制服警官達も

そうなんだよね、って

いっしょになって
盛り上がってる。


「悪や誤魔化しは
絶対に許さないって

取調室では
”鬼の粘着”と呼ばれている
おやっさんも

愛犬のオイタには
寛容そうだよな」


みんな笑ってるけれど。


「…そんなに恐いヒト
なんですか?」


そんな風には
見えないけれど。


「お嬢ちゃんが
真に受けてますよ」って

制服警官がまた笑った。


「何を
盛り上がってるんだ?」


電話を終えた
ニッタ刑事が戻ってきて。


「誰にエサを
頼んでたんですか〜?」


ニッタ刑事が
オジサン刑事を
からかっている。


「おふくろ、だ」


し〜ん。


いい歳をした
独身のオジサンが

母親と仲がいいのは


さすがに、やっぱり
ちょっとコワかった。