「あはは。
相変わらず母息子
仲がいいですね〜…」
ニッタ刑事が
その場の空気を
和ませようとした瞬間。
私のコートの中の
ケータイが鳴る。
…あれ?
この着信音はッッ。
「セイッ、アンタ
私の着信音まで…ッ!」
勝手にいじって変えたなッ。
「ほら、トーコ
母さんが待ってるから
帰ろうか」
って
セイってば
怒る私の背中を
押すようにして
慌てるように交番を出た。
「信じられないッ」
私はポケットから
ケータイを取り出そうとして。
「まだ出るな」
セイに耳打ちされ
ポケットに突っ込んだままの
その手を止められる。
…このケータイ。
「トーコちゃん!」
交番から
ニッタ刑事が飛び出して来た。
「今、着信したのメール?」
犯人からかもしれないから
確認してくれる?、って
マジな顔が
恐いんですけどおおおお。
「大丈夫ですよ。
たぶん
母がシビレを切らして
メールしてきただけなので」
もし、犯人からなら
連絡させますよ、って
セイは
ニッタ刑事に有無を言わせず
私の手を引っ張って
その場を足早に後にする。
セイは
いったい何を考えて
いるんだろうか。
ポケットのケータイは
何度も何度も
着信を繰り返していて。
まともなメールじゃないって
ゆ〜のは
私にもわかった。