距離を置いて
私達の後をついてくる
ニッタ刑事を振り切って

マンションに辿り着く。


郵便受けの貼り紙を

足も留めずに
セイは引っぺがすと

マンションの
エレベーターの中に
乗り込んで

初めてセイの足が止まった。


セイは
私のコートのポケットに
手を突っ込んできて

おもむろに
ケータイを取り出した。


「やっぱりッッ!」


ポケットに
突っ込んだ感触で
直感した通り

それは
私のケータイではなくて。


「セイのケータイッ!!」


どうして

私のポケットに
セイのケータイがッ。


「私のケータイッ
どこにやったのよッッ!!」


「……」

セイは私の訴えなど
気にもせず

私のポケットに
着信していた
メールを黙って眺めている。


「紺色のダッフルに
赤と白のマフラーが
キミによく似合ってるね。

…ケケケケケッ」


「ヒトが真面目に
訊いているのにッッ!!!」


何をふざけているんだかッ。


そりゃ
急いで用意したから

今日の私は
センスのない格好に
なってるかも
知れなかったけどッ。


「引っ掛かってきたな」

「はぁ!?」


「犯人が、だよ」


セイが私に
見ていたケータイの
液晶画面を見せてきた。


そこには


【紺色のダッフルに
赤と白のマフラーが
キミによく似合ってるね。

…ケケケケケッ】


セイがさっき口にした
セリフが

まんま表示されていて。