乱れ咲き♂010


「ただいま〜」

家に戻ると

「おかえりなさい〜」

部屋の奥から
掃除機の
おおきな音がしている。


「また、あのガキ
何かしでかしたのか」

セイは靴を
脱ぎ捨てるようにして
部屋の奥に入っていった。


「セイってば
行儀悪いよッ」

私はセイと自分の靴を
靴箱に戻して

セイの後を追う。


ママが珍しく
掃除した後なのか。

いつになく
玄関がキレイすぎて。


私は不覚にも

そこにあるハズの”それ”が
なくなっているコトに

気づくコトが
できなかった。


洗面所で
ウガイをしながら

セイが私のケータイを
差し出してくる。


「……」

返してくれるのは
ありがたいけど。


セイのケータイに
送信されてきていた
脅迫メール。


「私のケータイにも
入ってるよね」

「どうだろうね」


セイは
他人事みたいな見解を
口にして

私の肩で
自分の口を拭った。


「…セイが先に見てよ」

私はセイに
自分のケータイを
突き返す。


「いつも俺が先に
おまえのケータイ見ると

怒るクセに」


自分の勝手都合で
ヒトの手を
煩わせるヤツだ、って

私のケータイを受け取って
中を見てるけど。


アンタにそのセリフ
ノシつけて
返してあげますッ。


「…別に誰からも
メールひとつ
入ってないけれど」