野生の少女が
裸足のまま

ドアに駆け寄っていく。


ドアが少し開いて

ドアストッパーの向こう
ジュナさんの顔が見えた。


「こら、ダメじゃない。

鳴らし方が違うのに
開けちゃダメでしょ」


「おおおう。ミステイクッ」


広めのオデコを
ばちん、と自分で叩いて

ドアを閉める。


傍にあるイスを移動させて
器用に
ドアストッパーを外した。


空腹を刺激する
その匂いッ。


「ジュナッ。
ハンバーガー買ってきたかッ」

部屋に入ってくる
ジュナさんの手元を

ガサゴソ、と
少女が探る。


セイだって
お腹が空いているだろうに

そんなモノには
誘惑されないぞ、とばかりに


「病院のこの子のママさん。
容体が変わりでも
したんですか?」


コトバの語尾が
それとなく苛立っていてッ。


「あら。アナタ…ッ」

どうしてここにいるの、って
言わんばかりに

セイの姿を見つけて

ジュナさんの眉が
不愉快そうに

ピクリ、と動いた。


「あッ。私がここ教えて
来て貰ったんですッ」


セイがこの場にいるという
事実を

これでも
必死で取り繕ったのにッ。


「…カードキーがなければ

エレベーターだって
この階に
停まらなかったでしょう?」


簡単に一蹴される。