「…え、あはッ?」

女子高生の愚行を
笑って誤魔化せるのは

中高年の男性相手だけ、だって
わかってはいたけれどッ。


「……」

セイの長い腕が

私の後頭部の髪の毛を
鷲掴みにしてッ!!!!


「この貸しは
キッチリそのカラダで
返して貰うからなッ」

「……」


額に汗を滲ませながら
キレイな顔で
睨むのはやめてくださいッッ。


「…仲のいい姉弟なんだね」

ジュナさんが笑っててッ。


いったい
この状況のどこが

”仲がいい”って表現に
ふさわしいと
言うのでしょうかッ。


「私なんか
アニキと歳が離れてるから

取っ組み合いのケンカなんか
したコトないもんね」


歳が近くても
ケンカしない姉弟は
しないと思いますけれどッ。


「アニキは
父親みたいな存在だったから

気分的には
ひとりっこ、かな」


ジュナさんは
ハンバーガーを
袋から取り出して


「お客さんが増えたなんて
知らなかったから」

ふたりで
仲良く分けて食べてね、と

私に差し出した。


…”仲良く”というコトバに
力が入っていたような
気がするのは

私が卑屈なせいなのかッ。


「これも食べていいぞッ」

短〜いポテトを2本
選びに選び抜くッ。


「この子が
自分の好物をヒトに譲るなんて
初めてみたかも…」

って。

大袈裟なッ。


「…バカトーコに
食わせるモノなんかないぞッ」


眉間にシワを寄せながら
セイがひとりで
ハンバーガーに
かぶりついててッ。


ご無体なッ。


「トーコはさっき
ひとりでカエル食ったしなッ」


…いい加減
その話は忘れてください。