だけど
『ウソつき野郎!!』
『『彼』に謝れッ』
『みんな知ってるんだぞッ』
『謝〜っまれッ!
謝〜っまれッ』
スピーカーで
おおきく誇張される
自分達の声に
煽られるようにして
みなが
自分を忘れていて。
オトコは腰を抜かしたまま
反論も出来ずにいた。
私が
セイに視線を向けると
わかってるから、って
顔をして
「…そろそろ
保護しにいってやっても
いいんじゃないですかね?」
セイがニッタさんに
提案した。
「もうこれでアイツも
書き込みの恐さを
思い知ったコトでしょう」
「…あ、ああ。そうだね」
ニッタさんが
窓の外を見つめ続けていた
おやっさんを
チラリ、見る。
「…もう充分だろう」
おやっさんは
視線を落したまま
そう呟いた。
おやっさんのGOサインに
ニッタさんと婦人警官が
嬉々として
部屋を飛び出して行く。
そんなふたりの
若い警察官の背中を
ガラス越しに
見送りながら
「…そうだよな。
キミの言う通りだったかも
しれない」
おやっさんは
ゆっくりと目を閉じた。
「彼女の死を汚していたのは
この私自身の弱さ
だったのかもしれない」