「うあ…。綺麗だ…」
おやっさんの隣りで
我関せず、って様子で
窓の外を見ていた
ジュナさんが
感嘆のコトバを漏らして。
「うほッ?」
オヤジさんを
押し退けるようにして
少女が
ジュナさんの膝の上に乗る。
「おおう…」
ガラスに自分の顔と手を
力いっぱい
押しつけるようにして
少女がおおきな目を
さらに見開いている。
「何だ?」
セイも
自分の近くの窓ガラスから
外の様子を
覗き込んだりしてッ。
アンタ達ッ。
マイペースなのも
たいがいにしなさいねッ!
「トーコもさ。
ちょっと見てみろよ」
セイが私の後頭部を
抱え込むようにして
窓の外を見ろと
強要して…!
「あ」
いつの間にか
いなくなっていた
街宣車。
あんなに
眩しかったライトが
ひとつだけ
撤去し損ねていて。
真っ暗な空に向って
光の道を
天に向って
一直線に走らせていた。
その光の中を
風に煽られているのか
真っ白に輝きながら
たくさんの蓮の花が
踊っていて。
夢のような光景が
広がっている。
「この出逢いは
神様の導きなんかではなく
きっと『彼』の
イタズラだったのね」