乱れ咲き♂022


「腹ごしらえも出来たし」

もうここに
長居する必要はない、って

セイは私に
少女に靴と靴下を
履かせるように指示をした。


「ちょっと待ってよ!」

この子まで
連れ帰る気なの、って

ジュナさんが
少女を抱きかかえて
離そうとはしない。


「アンタ、さあ。

こんなトコロにいつまで
このガキを

閉じこめていられると
思ってるワケ?」


セイが少女の腕を
強引に引っ張った。


ジュナさんとセイが
少女を奪い合って

「痛いぞッ!!!!」

少女が叫ぶ。


「ふたりともッ
冷静にッ!!」


私の仲裁など
聞く耳持たず、というカンジで

ふたり
手加減なしで
引っ張り合っていた。


こういう
日本の昔話、あったよね。


母親を名乗るオンナが
ふたり。

どちらが母親とも
判断できず


困ったお奉行さまは

母親ふたりに
子どもを取り合いさせて


「痛い」と
泣き叫んだ子どもの声に

思わず手を
引っ込めてしまった方の
オンナを

本当の母親だと認定した
というお話。


このお話を聴いたときは
お奉行様の試験に
感心したモノだけど。


しょせんは夢物語。


相手に渡したら
大変なコトになる、って
思ったら

子どもが痛がろうと
泣き叫ぼうと

やっぱり
その手を離すなんて
有り得ないだろう。