広いバスルーム。
セイの冷やかな横顔を
鏡越しに確認して
額に汗がひた走るッ。
「……」
「……」
「…おう?」
空気が読めない少女が
バスルームのドアを
開けようとして
私は慌ててカギを掛けてッ。
「ダメなのよッ。
今はダメなのッ」
「そんな説明の仕方で
ガキが納得するか?」
八つ当たりするように
グリグリ、と
セイのコブシが
私のコメカミを
エグってきたッ。
「セイッ。痛いってばッ」
「痛いってさ」
「ほほおう?」
少女が
目をキラキラさせて
苦悶する私の顔を
覗き込むッ。
「ダケン、おもしろいか?」
「おう?」
「もっと楽しいコトして
遊びたいよな?」
「ひょっほほほ〜♪」
セイが
少女を煽ってって。
…何かとってもヤな予感ッ。
「トーコ、おまえ
ちょっとコート貸してやれ」
「……」
だけど
セイが
「コートを脱げ」という
表現をしなかったから
私は
油断をしてしまったワケで。
「このガキに
おとなしく隠れていて貰う
いい方法がある」
なんて
セイのコトバを
額面通りに受け取っては
イケない、って
たくさんの経験が
私を賢くしたハズ
だったのにッ。
コートの裾を
抱え込んだ少女に
引っ張られるようにして
コートを簡単に奪われた。
「…何に使うの?」