「強く引っ張ったら
前が肌蹴ちゃ…ッ!?」


思わず
怒鳴りそうになった瞬間


ドヤドヤドヤ、と

部屋の中に
ヒトが入ってきた
気配がして

私は息を飲んだ。


「昔から『彼』の世界には
興味があったので

この機会にぜひ、って
ジュナさんに無理を言って
ここに通して貰ったんですよ」

セイのよく通る声が
聴こえてくる。


「ジュナさんも

あの子を
預かって貰ってる手前

さすがに
断りにくかっただろうから

責めないで
あげてくださいね」


…なんてッ。


セイってば

聴いているこっちが
恥ずかしくなるくらい

上から目線で
モノを言ってってッ。


ジュナさんの声が
聴こえないトコロをみると

そんなセイに
かなり不機嫌な態度を
見せていると
推測され…。


「セイくんに
こんなトコロで遇うとは
思わなかったから

驚いたよ」


聞き覚えのある
この野太い声は

ニッタ刑事…?


「俺もですよ。

だってニッタ刑事さん達は
ヒメミヤ家の事件を
追っているんだとばかり
思っていましたから」


ヘリの炎上にまで
駆り出されて

大変ですね、と

セイが
白々しく探りを入れて。


「いや、実は
ヒメミヤ家の事件の犯人から

ホテルを爆破炎上させると
連絡があってね」


「ちょっと
ニッタくんッ」


おしゃべりが
過ぎるわよ、って

女性の声が聴こえてきた。